このページのまとめ
- 上海市は、中国内陸部と比べると黄砂の被害は少ない
- 上海市の黄砂はそこまでひどくはないとはいえ、大気汚染の対策は取るべき
- 黄砂を吸い込むと、呼吸器疾患に繋がったりアレルギー反応が出たりする
- 上海市で暮らすには、黄砂以外にも中国人との価値観の違いや飲食する場所に注意
日本人のなかには、黄砂について詳しく知らない方もいるでしょう。また、上海市への移住を考えている人は、黄砂が量が気になる方もいるのではないでしょうか。このコラムでは、上海市の黄砂の状況を解説します。また、黄砂が発生したときの予防や対策方法も紹介。上海の生活で黄砂以外に気を付けたいこともまとめているので内容を参考にして、上海市での暮らしを快適にしましょう。
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黄砂とは
ここでは、黄砂の定義や特徴について解説していきます。
粉塵が巻き上げられる現象のこと
黄砂とは、中国大陸内陸部のゴビ砂漠や黄土高原、タクラマカン砂漠から細かな粉塵が大気の動きによって東アジア全体に降り注ぐ現象です。また、実際に地上に降り注ぐ砂や土そのものも黄砂と表現します。なお、英語での名称は「Asian dust」です。
黄砂は、発生源に隣接する中国はもちろん、韓国や日本にも偏西風に乗って運ばれてきます。日本海側だけではなく、ときには太平洋側で観測されることもあるようです。中国で観測される黄砂は粒が大きく、韓国や日本まで運ばれてくるにつれ粒が細かく変化していきます。粒が大きければその分肺や目などに取り込みやすくなり、健康や環境に対する影響は大きくなるでしょう。中国に住むのであれば、黄砂への対策は日本にいるとき以上にしっかり取らなければなりません。
春に発生しやすい
大規模な黄砂が発生する時期は、3~5月の春ごろといわれています。理由は、黄砂が発生する条件が春に揃いやすいためです。
黄砂は強い風によって飛来するものですが、中国大陸内陸部の場合、冬はシベリア高気圧の影響で強風があまり起きません。しかし、春になると低気圧が発達するため強風の日が増え、その結果黄砂が頻繫に発生します。また、雪解けにより砂漠や乾燥地帯の粉塵が飛びやすくなるのも、黄砂が春に頻発する要因の一つでしょう。6月以降は雨が降ったり植物が根を張ったりするので、黄砂は一気に減ります。ただし、砂漠化の進行や温暖化の影響で、夏~秋でも大規模な黄砂が起きるケースこともあるようです。
黄砂がもたらす影響
黄砂は、健康や生活に大きな影響をもたらします。
最も懸念されてるのは健康被害です。黄砂には有害物質が付着しており、吸い込むと喘息や気管支炎などの呼吸器疾患に繋がるといわれています。また、アレルギー反応がでることも多いようです。スギやヒノキの花粉にアレルギーを持つ人は、特に注意すべきでしょう。
直径2.5㎛以下の黄砂はPM2.5(超微粒子物質)とも呼ばれます。PM2.5とは黄砂やカビ、石炭燃料の煙などの大気汚染物質のうち、直径2.5㎛以下のもののことです。PM2.5を吸い込むと肺の奥深くまで入り込み、呼吸器や循環器の疾患に繋がるといわれています。
黄砂が生活に与える影響も深刻です。日本でも黄砂が洗濯物に付着したり、自動車のボディーを汚したりといった被害があります。中国ではさらに粒子の大きい黄砂が降り注ぐため、より大きな被害がでるのです。たとえば、黄砂の量が多いと視界が非常に悪くなるため、飛行機や自動車などの交通機関が麻痺します。また、家畜が死亡したり、農産物に影響がでたりすることも。中国での暮らしには、黄砂と上手く付き合っていく工夫が必要深不可欠です。
上海市の黄砂はどのくらい?
上海市は、中国内陸部の都市と比べると黄砂の被害が少ないといわれています。理由は、上海市は東シナ海に突き出すように位置し、黄砂の発生源からは比較的距離があるからです。黄砂は発生源に近ければその分被害が大きくなります。そのため、より内陸部に位置する北京市や河北省などの地域と比べると、大きな影響は出にくいでしょう。なお、全く黄砂が発生しないわけではありません。あくまで内陸部と比較したら少ないというだけであり、それ相応の対策は必須といえます。
黄砂から身を守るには?上海市で暮らすうえでの対策
上海市のみならず、中国で生活するうえで黄砂への対策は欠かせません。ここでは黄砂が発生する前、発生中、発生後に分けて行うべき対策を紹介します。
黄砂の被害を抑えるには予防が大切
黄砂の被害を最小限に食い止めるには、予防対策が重要です。黄砂の発生が予測されたら、自宅や職場の窓を点検しましょう。万が一、ガラスが割れていたりすき間が空いていたりしたら、黄砂が室内に流入する恐れがあります。また、食材に黄砂が付着するのを防ぐため、密封の容器や袋に入れるのも大切です。黄砂の発生時に外出しなくても済むよう、食料品や日用品をあらかじめ備蓄しておくのも良いでしょう。
黄砂が発生しているときの行動
黄砂が発生している最中は、外出は可能な限り避けましょう。やむを得ず外出する際はマスクはもちろん、防塵メガネもあると安心です。なお、マスクは通常の不織布マスクでは黄砂を十分に防げません。「N95」規格のマスクであれば、細かい粒子の吸い込みも大幅に防げます。
黄砂発生時に外出したら、帰宅後はすぐにシャワーを浴びるのがおすすめです。体や髪の毛に付着した黄砂を洗い流すことで、室内への流入を防ぎます。なお、ウール素材やファーの付いた服は、黄砂が付着しやすいのでなるべく避けましょう。ナイロンやレザー、ポリエステルなどのつるつるとした素材の服を選ぶのが賢明です。
黄砂が去ったあとの処理
黄砂が去ったあとも油断は禁物です。室内を速やかに換気し、綺麗な空気を室内に取り込みましょう。窓やドア、ベランダはしっかり拭き掃除をし、黄砂が巻き上がらないようにします。どのタイミングで黄砂が付着しているか分からないため、洗浄できるものはなるべく洗って使うようにすると良いでしょう。なお、黄砂は時間が経つとこびりついて落としにくくなります。そのため、できる限り早く掃除を行うのがおすすめです。
上海市の黄砂はインターネットやアプリで確認できる
上海の黄砂の状況は、天気予報のように確認が可能です。専門のアプリのほか、Webサイトで上海市の黄砂の状況が分かります。黄砂が実際にどの程度起きるかは、当日になってみなければ分かりません。アプリやWebサイト、インターネットニュースを上手く使い、こまめに情報収集をしましょう。
黄砂は悪影響だけではないって本当?
黄砂の発生には、少なからず良い点も存在します。具体的には「プランクトンの養分になる」「酸性雨中和作用がある」などです。また、黄砂は幻想的な景色を作り出すことでも知られています。黄砂のポジティブな面を知ることで、向き合い方も変わってくるでしょう。
プランクトンの養分になる
黄砂はプランクトンの養分になります。黄砂が海に降り注ぐと、植物プランクトンの養分である鉄分やミネラルが増加。その結果、植物プランクトンを養分とする動物プランクトンが増え、動物プランクトンを食べる魚が増えるという循環が生まれます。東シナ海で魚がたくさん獲れるのは、黄砂の影響も少なからずあるでしょう。
プランクトンが増えることは、地球温暖化の抑制にも繋がります。植物プランクトンが光合成を行うと二酸化炭素が減るためです。一見、環境に悪い影響ばかりを与えていそうな黄砂ですが、このように、環境にプラスに働いている側面もあります。
酸性雨を緩和させる
黄砂には、酸性雨を緩和させる力があることが知られています。黄砂は、アルカリ性の土壌から巻き上げられた粉塵です。そのため、空中を浮遊しているときに酸性の雲とぶつかることで、酸性雨を中和させられます。
美しい景色を作り出す
黄砂は、程度によっては美しい景色を作り出すことがあります。建造物や景色がぼんやり霞んで見える現象は、とても幻想的です。和歌の題材になる「春がすみ」や「おぼろ月」などの現象は、黄砂も要因の一つと考えられています。黄砂と聞くとネガティブな印象を持ってしまいがちですが、美しい景色のもとになっていると思うと、感じ方も変わってくるでしょう。
黄砂以外にもある!上海市で暮らす際の注意点
日本人が上海市で暮らすうえで注意すべきなのは黄砂だけではありません。経済がめざましく発展している中国は、日本以上に大気汚染が深刻です。また、飲食や買い物をする場所をしっかり選ばないと健康を害したり、損をしたりする場合もあるでしょう。
大気汚染
上海市は中国のほかの都市と比べると、黄砂の影響は少ないでしょう。しかし、空気がとても綺麗かというとそうではありません。上海市は中国有数の大都市です。排気ガスや石炭燃料による大気汚染は、日本と比べると深刻といえます。中国政府も大気汚染を食い止めるための対策を行っており、一時期よりは改善してきました。しかし、注意しておくに越したことはありません。大気汚染の対策にはマスクが有効です。上海市に住む中国人はマスクをする習慣があまりないようですが、健康被害が気になる人は忘れずに付けましょう。
飲食や買い物をする場所
日本人が上海市で飲食や買い物をするときは、場所をしっかり選ばければ体調を崩したり、損をしたりすることがあります。
上海市のみならず、中国では屋台での飲食に要注意です。中国と日本では衛生観念が異なります。そのため、中国の屋台で食事をすると体調を崩す日本人が多くいるのです。特に海鮮や大量の油を使う料理は避けた方が良いとされています。海鮮は痛みが早く、油は古いものを繰り返し使っている場合があります。
日本人が上海市で買い物をするときは、中国人向けの店と日本人向けの店を上手く使い分けられるようになると良いでしょう。日本人向けの店では、中国人向けの店と比べ高めの価格が設定されていることも珍しくありません。なかには、数倍の値段で売られている商品も。ただし、日本人向けの店では日本語が通じたり、日本人向けのものが購入できたりするメリットがあります。上海市での暮らしに慣れるまでは日本人向けの店を活用し、慣れてきたら中国人向けのローカル店も利用してみるのがおすすめです。
価値観の違い
上海市で暮らすには、中国人と日本人に価値観の違いがあることも理解しておかなくてはなりません。中国に移住した日本人が驚くのは、公共マナーに対する価値観の違いです。中国では、列に割り込んだり、ゴミをポイ捨てしたりする人が日本より多くいます。また、公共交通機関で大声で会話する人も珍しくないでしょう。日本人の価値観からすると、驚くような行動をする人もいます。しかし、中国人には中国人の価値観があるので、日本人の感覚を押し付けるのは望ましくありません。中国で暮らすのであれば、中国人の価値観をできる限り受け入れる必要があるでしょう。
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