中国の民族衣装の歴史とは？若者の間では漢服がブームに

このページのまとめ

• 中国の民族衣装は「漢服」と「胡服」の2系統に分かれる
• 漢服は漢民族の伝統的な衣装、胡服は北方の騎馬民族が着用していた衣装
• 胡服の中でも代表的なのは満州族が着用した「旗袍」
• 漢服は現在若者たちの間でブームになっている
• 旗袍は洋裁の手法を取り入れチャイナドレスに変化した

中国の民族衣装というと、チャイナドレスをイメージする人が多いかもしれません。実は、チャイナドレスは「旗袍」という古くからある衣装に洋裁の製法を取り入れたもので、現在のスタイルは1930年代頃に定着したものです。

このコラムでは、中国の民族衣装の歴史や、最近若者たちの間で起こっている「漢服ブーム」について紹介します。中国の衣装や文化に興味のある方は、ぜひご覧ください。

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中国の民族衣装の歴史

中国の民族衣装の系統は、大きく「漢服」と「胡服」の2つに分かれます。漢服は、古くから多数派であった、現在も中国の人口の9割を占める漢民族の伝統的な衣装です。胡服は戦国時代に北方の騎馬民族が着用していた衣装のことで、漢服と比べると動きやすいのが特徴です。

南北朝時代、モンゴル高原の騎馬民族・鮮卑族が北魏を建国すると、胡服の要素が官服に取り入れられるようになり、その後の王朝でも官服には胡服の影響が見られます。また、活動しやすい胡服のスタイルは、次第に漢民族の庶民の間にも広まっていきました。

胡服の中でも代表的なのは、満州族が着用した「旗袍（満州服）」で、満州族が建国した中国最後の統一王朝・清の時代には、漢民族の男性に旗袍の着用が強制された歴史もあります。

中国の民族衣装「漢服」

漢服は全体的にゆったりとしたつくりで、優雅な印象のある衣装です。男女ともに襟があり、ワンピースのように上下がつながった前開きの衣に帯を締めたスタイルが特徴。袖は太く、裾は地面につくほど長く、下には裙子（スカート）や袴（ズボン）を履き足を隠します。

上下が一体となったタイプのほかに、上下が別々の「上衣下裳」と呼ばれるより格式の高いスタイルも存在し、こちらは官人や皇帝が公式の場で着用しました。

漢服は時代によって何枚も重ね着したり、動きやすいように軽装化したりと、変化を繰り返してきた衣服でもあります。

中国の若い世代で漢服がブームに

清の時代に満州族の服装や髪型が強制されたことをきっかけに、漢服の文化は衰退していきます。日本では成人式などのイベントで着物を着ますが、中国では特別な機会でも漢服を着用するのは一般的ではありませんでした。

しかし、近年、中国の若い世代の間で漢服ブームが起こり、再び漢服を着る人の姿を見かけるようになりました。漢服が若者に広まった要因の一つはSNSで、多くの若者がSNSの写真や動画を通じて漢服の魅力に気づき、自らも漢服を着る人が出てきています。

若者の漢服の着こなしはさまざまで、現代的なデザインを取り入れた漢服を着る人もいれば、漢服にスニーカーやリュックを合わせる人も。公園や観光地では、漢服を着て記念撮影をする人もいて、中には普段着として漢服を着用する若者もいるようです。

漢服の需要が高まったことから、中国のショッピングサイトでは多くの店舗が漢服を扱うようになり、国内では漢服のファッションショーが開催されたり、漢服を使って町おこしを試みる自治体も出てきたりしています。

中国の民族衣装「チャイナドレス（旗袍）」

漢服と並んで有名な中国の民族衣装は、満州族が着用していた「旗袍（チーパオ）」です。日本では中国服というとチャイナドレスをイメージする人もいますが、チャイナドレスは旗袍に洋服の製法を取り入れてできた衣装です。

もともとの旗袍は男女ともに戦闘服として着用したもので、馬に乗りやすいよう身ごろにスリットが入っているのが特徴です。ただ、チャイナドレスとは違って服の下にズボンを履くスタイルで、機能性が高く活動に適した衣服だったといえます。

旗袍は、1930年代に袖口が細く腰回りが体にフィットする現在のチャイナドレスのようなデザインとなり、女性の美しさを強調するためスリットも深くなりました。

中華人民共和国の建国以降、文化大革命の期間にチャイナドレスは廃れましたが、その後は香港映画で女優がチャイナドレスを着用していたことをきっかけに再びブームが到来。現在は飲食業の制服として着用されたり、海外向けの土産物として販売されたりしています。

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