ホーチミンのビルの夕景

このページのまとめ

  • ベトナムに進出している日本企業数は約2,000社
  • ベトナムに進出中の日本企業の55.3%が今後の事業拡大に前向き
  • ベトナム農業における日本企業の活躍に期待が高まっている
  • ベトナムで活躍している日本企業は「キヤノン/パナソニック/ホンダ/トヨタ」など

ベトナムでの就労を検討している方の中には、「日本企業の現地での動向を知りたい」と考える方も多いでしょう。このコラムではベトナムに進出中の日本企業の実態について詳しく解説。日本貿易振興機構(JETRO)が調査した「海外進出日系企業実態調査アジア・オセアニア編」の結果をもとに、ベトナムに進出する理由や今後の事業領域についてお伝えします。

ベトナムに進出している日本企業数は約2,000社

日本貿易振興機構(JETRO)が公開している情報によると、現在ベトナムに進出している日本企業の数は1,985社です。この数字はベトナムに拠点を置く「ベトナム日本商工会議所」「ダナン日本商工会議所」「ホーチミン日本商工会議所」の3つの日本商工会議所への加入企業数が指標となっています。それぞれの所在地と最新の会員数を以下にまとめました。

名前所在地加入企業数
ベトナム日本商工会議所(JCCI)ハノイ市787社(2021年12月1日時点)
ホーチミン日本商工会議所(JCCH)ホーチミン市1,040社(2021年12月22日時点)
ダナン日本商工会議所(JCCD)ダナン市147社(2020年12月)

各Webサイト及び日本貿易振興機構(JETRO)より引用作成

上記数字を鑑みると、2021年12月時点での日本企業数は1,947社ということになります。ただし、これはあくまでも日本商工会議所に加入している企業の数です。商工会議所のない地域に拠点を置いている、商工会議所を利用する必要性がない、などの理由から未加入の企業は含まれません。そのため実際に進出している企業の実数とは異なる可能性が高いでしょう。

進出企業の業界と規模の内訳

JETROが実施した2021年度の「海外進出日系企業実態調査アジア・オセアニア編(p.8-9)」によると、調査対象となったベトナムに進出している日本企業1,883社のうち製造業は348社、非製造業は354社で内訳は半々となっています。また、企業規模の内訳は大企業が369社で中小企業は333社と、こちらもほぼ同等という結果です。

ベトナムに進出中の日本企業の利益の見込みと見通し

ここでは先に紹介したJETROの「海外進出日系企業実態調査アジア・オセアニア編」の結果をもとに、ベトナムに進出中の日本企業の利益の見込みと見通しについてチェックいきましょう。 まずは2021年の営業利益見込みへの回答をまとめた表をご紹介します。

(単位%)

黒字均衡赤字
全体54.317.028.6
大企業61.415.523.1
中小企業47.018.634.4

同資料_p.11より引用作成

上記のとおり黒字を見込んでいる企業は54.3%。全体の半数ほどの企業は業績が好調と考えられるでしょう。また、企業規模別に見ると黒字を牽引しているのは大企業だと分かります。

さらに、2021年の営業利益見込み(20年比)と2022年の営業利益見通し(21年比に)おける「改善」「横ばい」「悪化」の回答結果を見ていきましょう。

(単位%)

2021年の営業利益見込み2022年の営業利益見通し
改善31.456.2
横ばい32.036.4
悪化36.64.9

同資料_p.14より引用作成

2021年の営業利益で「悪化」と回答した企業は全体の4割以下。また、2022年の見通しにおいては半数以上の企業が「改善」と答えています。ベトナムに進出中の日本企業の業績はおおむね好調と捉えられるでしょう。

55.3%の企業が今後の事業拡大に前向きな姿勢

事業展開における今後1~2年に方向性についての統計(同資料p.20)では、693社のうち55.3%の企業が「拡大」と回答しました。この数字は20年度の調査から上昇しています。残り半分の内訳は「現状維持:42.6%」「縮小:1.9%」「第三国(地域)へ移転、撤退:0.3%」という結果です。約8割がベトナムでの拡大と残留を示していることから、今後もベトナムにおける日本企業の活躍に期待できるでしょう。

拡大するのは「販売機能」と「生産機能」

拡大する機能についての回答(同資料p.24-25)をチェックすると、「販売機能:49.1%」「生産機能(高付加価値品):38%」「生産機能(汎用品):33%」という結果でした。このうち「生産機能(高付加価値品)」については2020年から上昇しています。

経営上の問題点は従業員の賃金上昇

業種共通で調査した経営上の問題点について、2021年のベトナムの回答(同資料p.36)は以下のとおりとなりました。

順位問題点の内容回答企業社数割合
1従業員の賃金上昇49773.4
2通関等諸手続きが煩雑30445.9
3競合相手の台頭(コスト面で競合)28044.9
4新規顧客の開拓が進まない27443.9
5税務( 法人税、移転価格課税など) の負担27340.9

この結果から、従業員の賃金の上昇を課題としている企業が多いと分かります。ちなみに2020年の同調査においても、「従業員の賃金の上昇」を問題としている企業は全体の65.8%ともっとも多かったです。前年よりもさらに割合が増していることから、課題の改善に至っていないことが伺えるでしょう。なお、「従業員の賃金の上昇」はベトナムのみに限らず、シンガポール、タイ、インドネシア、フィリピンといった近隣諸国に進出している企業においても、同回答が1位となっています。

以前は日本企業のベトナム進出理由は「人件費の安さ」だった

以前は日本企業がベトナムに進出する理由として「安価な人件費」が挙げられていました。しかし先に紹介した経営上の問題点の結果のとおり、現在ではこの魅力は失われつつあります。ベトナムの賃金は年々上昇しているのが実情です。JETROが公開しているベトナム統計局の「ベトナムの1人当たり月間平均所得」によると、2010年から2020年までの10年間で3倍以上増加していると分かります。ベトナムの賃金事情については「ベトナムの平均年収は?地域別の年収や年収が高い業界も解説!」のコラムで詳しく解説していますので、こちらも合わせてご一読ください。

ベトナム農業における日本企業の進出と活躍

肥沃な国土を持つベトナムにおいて、農業は経済を支える基幹産業の1つです。しかし、実際には未整備な流通体制、生産性や品質の低さといった問題から、ポテンシャルを十分に発揮できていない状態にあります。このような背景があり、日本とベトナムは2015年に「日越農業協力中長期ビジョン(2015~2019年)」を策定し課題の改善に取り組んできました。

そして、2020年にはさらにそこから5年間の行動計画を定める次期フェーズ(2020~2024年)ビジョンを発表。次期フェーズでは「農業関連インフラの整備」「民間企業の投資促進」「農業振興政策・戦略策定支援、及び人材育成」の3つを優先取り組み分野として掲げています。

参照元:農林水産省_ベトナムに対する農林水産分野の協力について

日本企業同士の協業によるベトナム農業への進出も

2018年、株式会社アグリメディアと株式会社メイコーは共同でベトナム農業に新規参入しました。アグリメディアは東京に拠点を置き、農地活用事業や農業HR事業などを中心に日本の農業の発展に注力してきた会社です。すでにベトナムに進出していた電子回路基板の設計や製造販売などを展開するメイコーと手を組み、生産から流通までをワンストップで管理する体制を整え、日本ブランドの確立を試みています。アグリメディアにとっては初の海外進出であり、メイコーにとっては初の農業参入という挑戦です。今後は農業体験事業、飲食業の展開、日本農産物の現地販売などを視野に入れており、2023年度までに売上高14億円を目指しています。ベトナム農業における日本企業の活躍にも、期待が高まっているといえるでしょう。

ベトナムに進出している代表的な日本企業

最初の項目でお伝えしたとおり、ベトナムには大企業から中小企業まで2,000社近く日本企業が進出しています。その中から代表的な日本企業をいくつか紹介しましょう。

キヤノン

キヤノン株式会社はベトナム国内に3つの拠点があり(2021年時点)、それぞれ設立年月日や事業内容が異なります。2001年4月に「Canon Vietnam Co., Ltd.」はレーザープリンターやインクジェットプリンターの生産拠点としています。その後、2008年に電子機器などの生産拠点として「Canon Electronics Vietnam Co., Ltd.」を設立し、製造領域におけるさらなる拡充を実現しました。そして2012年にはホーチミン市に「Canon Marketing Vietnam Company Limited」を設立。以降、製品の輸入や販売体制をベトナム国内において構築しながら、既存の事業領域においてもシェアの拡大を続けています。

パナソニック

パナソニック株式会社はベトナムに8つの拠点を構えています(2021年時点)。1996年、合併会社としてスタートを切った「Công ty TNHH Panasonic AVC Networks Việt Nam」を始め、2003年、2006年、2007年、2013年と順調に事業を拡大していきました。大型家電製品の製造、および流通と販売をメインに活躍しています。さらに、2021年9月にはビンズオン省に新工場を建設し、換気扇と天井扇を生産販売の開始を発表しました。需要が高まる商品分野への領域拡大に乗り出しています。

ホンダ

本田技研工業株式会社(ホンダ)はベトナム国内に「Honda Vietnam Co., Ltd.」と「Vietnam Autoparts Co., Ltd」の2つの会社があります(2021年時点)。二輪車と四輪車の製造を行っている「Honda Vietnam Co., Ltd.」の設立は1996年に設立。生産拠点としてビンフック省とハナム省に合計4つの工場を構えています。また、2003年に設立された「Vietnam Autoparts Co., Ltd」はシリンダーやキャストホイールといった二輪用のアルミ部品の製造がメイン。ベトナム国内の二輪車の需要を支えながら、2021年1月には四輪車の生産が累計10万台を突破するなど、四輪車の分野でも活躍を見せています。

トヨタ

トヨタ自動車株式会社は1995年にベトナムに進出し、トヨタ・モーター・ベトナム(TMV)を設立。その翌年からハイエースとカローラの生産を始めました。その後順調に販売台数を伸ばし、1,000台だった1997年から2003年には一万台を突破。さらに2009年には3万台の水準に到達しました。シェア率も拡大を続け、30~40%台を推移しながら、1998年以降トップを牽引しています。

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