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このページのまとめ

  • ベトナムで個人が支払う税金は国税のみ
  • ベトナムの納税義務者は「居住者」「非居住者」に区分される
  • 給与所得に対する税率は居住者は累進課税式、非居住者は一律20%
  • 納税方法は「四半期」「月次」「年次確定申告」の3つがある

ベトナムでの就労を考えた場合、税金制度について知っておきたい方もいるでしょう。このコラムではベトナムの納税対象者、税率、申告期間などを詳しく解説。支払う税金の種類や課税対象となる所得を知っておくと、収入と支出の管理に役立ちます。現地で働く日本人の方も、転職先としてベトナムを検討している方も、ぜひ参考にしてみてください。

ベトナムで個人が支払う税金は国税のみ

ベトナムの税金は国が課税主体となる「国税」のみです。日本とは異なり、住民税や固定資産税といった地方公共団体が主体となる「地方税」はありません。ベトナムに進出している日本企業や日本人が納める税金には法人所得税、個人所得税、付加価値税、外国契約者税などがあります。この中で、ベトナムに働く人にもっとも関わりが深い税金はPITと呼ばれる「個人所得税」です。

個人所得税(PIT)の納税義務者は?

ベトナムで源泉所得が発生した人は、外国人・ベトナム人を問わず税金を支払う必要があります。また、ベトナム国外で就学・就労中で課税所得を有するベトナム人や、滞在はしていないけれどベトナム国内の源泉所得を有している外国人も対象です。したがって、ベトナムで働いている日本人には納税の義務が発生するといえます。

ただし、月額所得が基礎控除額の月1,100万ドン(約54,000円)に満たない場合は支払い義務はありません。また、ベトナムの個人所得税は「居住者」と「非居住者」のどちらに区分されるかによって、税率や課税対象が異なります。居住者と居住者の違いについては次項で詳しく解説します。

ベトナムの税金における居住者と非居住者の違い

先述したとおり、ベトナムの納税義務者は「居住者」「非居住者」に区分されます。ベトナムでは以下の条件に該当する人を居住者と定義し、これに該当しない場合は非居住者となります。

<居住者の条件>

概要具体的な条件
1年間の半数以上ベトナムに滞在する者・ベトナム国内における滞在期間が暦年のうち183日以上の者・ベトナムに入国した日から起算した連続する12カ月間において、ベトナム国内での滞在期間が183日以上の者
恒久的な居所をベトナム国内に有する者・恒久的な居所(※1)を有する者 ・賃貸住宅(※2)などで183日以上の契約期間を有する者

(※1)外国人であればResidence Card(一時在留許可証)に登録された住居

(※2)事務所、ホテル、作業場などを含め、契約の名義が個人・法人のどちらであるかは問わない

居住者の場合、初年度は入国した日を起点とした連続する12カ月間が課税対象期間となります。二年目以降は暦年となりますが、初年度との重複期間については控除が適用されるので安心してください。非居住者の場合は、所得が発生した際にその都度申告を行います。居住者とは異なり、確定申告は要求されません。

居住者の課税対象は全世界所得

課税対象となる所得にも居住者と非居住者で違いがあります。居住者の場合はベトナム国内の所得にとどまらず、国外で発生したもの含めた全世界所得が課税対象です。非居住者は所得の源泉がベトナム国内である場合に支払義務が生じます。それぞれの税率の違いについては次項で詳しく解説しましょう。

ベトナムで支払う税金の所得税率

ベトナムの給与所得に対する税率は居住者は日本と同じ累進課税式(5~35%)、非居住者は一律20%固定となっています。居住者の累進税率については以下の表を参考にしてください。

<居住者の累進税率>

月次課税所得(単位ドン)税率所得税の計算
500万(※3)以下5%課税所得の5%
500万超~1,000万以下10%課税所得×10%-25万ドン
1,000万超~1,800万以下15%課税所得×15%-75万ドン
1,800万超~3,200万以下20%課税所得×20%-165万ドン
3,200万超~5,200万以下25%課税所得×25%-325万ドン
5,200万超~8,000万以下30%課税所得×30%-585万ドン
8,000万超35%課税所得×35%-985万ドン

(※3)500万ドン=約24,760円

給与所得については、基本賃金に加えて報酬・その他の収入など、課税対象期間の間に納税者が受け取った収入額の合計が課税所得として扱われます。なお、残業代や夜間手当といった通常勤務外の超過給与は課税所得の対象外です。また、預金や生命保険の利息、年金、保険金なども非課税所得という扱いになります。そのほか、ベトナム税金における所得税の非課税所得については、日本貿易振興機構(JETRO)が公開している「所得税の非課税所得一覧表」を参考にしてください。

また、給与所得以外の各所得の種類と税率が気になる方は、日本貿易振興機構(JETRO)がまとめた以下の表をチェックしてみましょう。

<各所得の類型に応じた税率>

所得居住者非居住者
事業所得(個人事業者等)0.5~5%・物品販売:1%・サービス提供:5%・その他:2%
投資譲渡所得、資本譲渡益利益に対し20%取引額に対し0.1%
投資所得利益に対し5%
投資譲渡所得、証券譲渡益取引額に対し0.1%
不動産譲渡所得取引額に対し2%
ロイヤルティー所得1,000万ドン超に対し5%
フランチャイズ料1,000万ドン超に対し5%
賞金・獲得金からの所得1,000万ドン超に対し10%
相続からの所得1,000万ドン超に対し10%
贈与からの所得1,000万ドン超に対し10%

ベトナムの平均年収は?地域別の年収や年収が高い業界も解説!」のコラムではベトナムの平均年収について詳しく解説しています。ベトナムで働く予定のある方や就労先として興味のある方は、税制度と合わせて給与事情についても知っておくと、現地での収入をイメージしやすいでしょう。

基礎控除や扶養控除は適用される?

最初の項目でお伝えしたとおり、基礎控除は月1,100万ドンになります。扶養控除については以下の表に要件をまとめました。

適用の対象となる者年齢条件
・子・養子・非摘出子18歳未満適用
18歳以上大学などに就学中かつ無所得の場合は適用
・父母・配偶者・配偶者の父母労働年齢の範囲超無所得の場合は適用
労働年齢の範囲内無所得かつ身体障害により就労が困難な場合は適用
・祖父母・兄弟姉妹・甥姪・叔父、叔母(※4)労働年齢の範囲超無所得の場合は適用
労働年齢の範囲内無所得かつ身体障害により就労が困難な場合は適用

(※4)納税者と生計をともにしていることが条件

ベトナムの労働年齢は男性は18~62歳、女性は18~60歳となります(2021年12月時点)。また、無所得とは被扶養者の月額の所得合計が100万ドン以下である状態です。上記条件を満たした場合、扶養者は被扶養者一人あたり月440万ドンの控除が適用されます。

ベトナムではこのような扶養控除のみで、日本のような配偶者控除は適用されないのが特徴です。また、パートナーが労働年齢の範囲内の場合、身体的な障害がない限りは被扶養者の対象とはなりません。 

ベトナムの税金の申告と納税の方法

税金の納税方法は法人が行う場合と個人が行う場合の2通りがあります。そのうち、給与所得の規定についてを以下にまとめました。

給与の出どころ申告・納税義務者
外国法人からの給与給与を受け取る個人
ベトナム法人からの給与給与を支給するベトナムの現地法人

また、納税期限については「月次」「四半期」「年次」の3通りがあり、その区分は以下のとおりに規定されています。

月次の場合毎月20日
四半期の場合四半期の終わりの日から30日以内
年次確定申告の場合暦年の終わりの日から90日以内

納税期限は所得の支払地がベトナム国内が国外か、国内の場合は所得の支払地の場合、設立後の経過期間や前年の売上高などによって四半期または月次に区分されます。

1.ベトナム国外が所得の支払地→四半期

2.ベトナム国内が所得の支払地(以下表を参照)

設立からの経過年数前年の売上高源泉徴収税額納税期限
12カ月未満四半期
12カ月以上500億ドン以下四半期
500億ドン超5,000万ドン未満四半期
500億ドン超5,000万ドン以上月次

上記に加え、居住者としてベトナムで働く場合には、個人での年次確定申告が必要になることも覚えておきましょう。

参照元:日本貿易振興機構(JETRO)ベトナム_税制

ワンストップでの電子申請が可能に

ベトナムの声放送局」の報道によると、税務総局は2020年10月6日から「電子納税手続き補助システム」の利用を開始しました。税金の申告や支払いにおいて、これまで納税者は複数のサイトで作業を行っていましたが、このシステムが導入されたことですべての税金サービスの一括処理が可能となっています。
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