このページのまとめ
- 中国はGDP世界第2位の経済大国
- 中国企業による日本企業の買収が起こっている
- NECや富士通のPC部門、東芝の家電部門などが買収されている
- 中国企業は、技術力や安全性といった日本企業のブランド力を欲している
- 中国傘下になることで金銭的な安定が得られ、経営が改善することもある
- 一方、中国の親会社による方針変更で、事業方針を変更しなければならなくなる場合もある
中国に買収された日本企業について知りたい方に向け、中国企業の傘下に入った有名な日本企業について紹介します。コラムを読んで、中国企業による買収が進んでいる現状と、その理由について知りましょう。
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中国に買収された日本企業一覧
日本を抜き去り、GDP世界第2位の経済大国となった中国。近年はIT分野の発展がめざましく、アジア地域を中心に積極的な海外進出を進めています。もちろん日本への進出も盛んで、中国企業が日本企業を買収するというケースも珍しくはなくなっています。
日本企業の技術力や安全性は世界的にも評価されており、国際的なブランド力を確立しています。中国企業は、こうした日本企業の技術力やブランド力を獲得しようとしているのです。
ここでは、中国に買収された日本企業の一覧を紹介します。かつて日本を支えた有名企業が現在は中国企業の傘下になっている、ということも少なくありません。
買収された日本企業 | 業種 | 買収した中国企業 | 買収された時期 |
山水電気 | オーディオ機器製造 | 善美集团 | 1991 |
赤井電機 | オーディオ機器製造 | 善美集团 | 1994 |
ナカミチ | オーディオ機器製造 | 善美集团 | 1997 |
アキヤマ印刷機製造 | 印刷機械製造 | 上海電気集団 | 2002 |
東亜製薬 | 製薬 | 華潤三九医薬 | 2003 |
池貝 | 産業機械製造 | 上海電気集団 | 2004 |
MSK | 太陽電池製造・販売 | Suntech power | 2006 |
丸石サイクル | 自転車製造 | 天津富士達電動車 | 2006 |
フェニックス | スポーツウェア製造 | 中国動向 | 2008 |
ラックスマン(クオンツ) | オーディオ機器製造 | IAG(International Audio Group) | 2009 |
ラオックス | 家電量販店 | 蘇寧電器 | 2009 |
赤城水産 | 食品 | 杭州知味食品 | 2009 |
SJI | システム開発 | 神州数碼 | 2009 |
レナウン | アパレル | 山東如意科技集団 | 2010 |
オギハラ(金型工場) | 自動車用金型 | BYD(比亜迪汽車) | 2010 |
日興電機工業 | 商用車部品・附属品製造 | 寧波韻昇 | 2010 |
本間ゴルフ | ゴルフ用具製造 | 上海奔騰企業 | 2010 |
NECパーソナルプロダクツ(PC部門) | PC製造 | Lenovo(聯想集団) | 2011 |
三洋アクア | 家電製造 | Haier(海尔集团) | 2011 |
スタックス | オーディオ機器製造 | 漫歩者科技 | 2011 |
NEC液晶テクノロジー | 液晶ディスプレイ製造販売 | 天馬微電子 | 2011 |
イクヨ | 自動車部品製造 | 大連日東塑料加工 | 2011 |
湘南エナジー | 車載用ニッケル水素電池事業 | 湖南科力遠新能源 | 2011 |
popIn | インターネット事業 | 百度(Baidu) | 2015 |
東芝ライフスタイル | 家電製造 | Midea(美的集団) | 2016 |
富士通クライアントコンピューティング | PC製造 | Lenovo(聯想集団) | 2018 |
ダイナブック | PC製造 | ホンハイ(鴻海精密工業) | 2018 |
タカタ | 自動車用安全部品製造 | Key Safety Systems(現Joyson Safety Systems ) | 2018 |
パイオニア | オーディオ機器製造 | BPEA(Baring Private Equity Asia) | 2019 |
太平洋セメント | セメント | 秦皇島長陽混凝土有限公司 | 2020 |
三井化学不織布 | ヘルスケア | 广东必得福医卫科技股份有限公司 | 2021 |
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中国企業に買収された主な日本企業と買収の背景
ここでは中国企業に買収された日本企業のうち、特に大きく話題になったものについて買収の背景を紹介します。
NEC、富士通
PCブランドとして有名なNECと富士通は、かつて日本のIT分野を支える巨大企業でした。しかし、不況による業績不振が続いたこともあり、現在はLenovo傘下のブランドとなっています。
LenovoによるPCブランドの買取が始まったのは2011年のこと。NECパーソナルプロダクツのPC部門を買収し、合弁会社「Lenovo NEC Holdings B.V.」の100%子会社というかたちでNECパーソナルコンピュータを設立しました。このときNECのブランドだったLAVIE、Mate、VersaProは、Lenovo傘下のブランドとなっています。
また、2016年には、Lenovoが富士通のPC部門「富士通クライアントコンピューティング」の筆頭株主に。これにより富士通のブランドFMVを手に入れました。
Lenovo傘下に入ったあと、親会社の強みを活かして国内外でシェアを拡大。黒字転換に成功しました。
三洋アクア
三洋は、戦後に開発した洗濯機がヒットし、日本屈指の家電メーカーに成長した企業でした。しかし、経営難によって2011年にパナソニック傘下に。そして、子会社である三洋アクアはHaierに買収されました。
現在は「AQUA」というブランドになっており、冷蔵庫や洗濯機などの生産を中心に、アジア地域で展開しています。買収によって「SANYO」ブランドは日本から消えてしまいましたが、インドではパナソニックによって「SANYO」ブランドが継続して用いられています。
レナウン
レナウンは、20世紀にCMソングが話題となった、女性向け衣料品の大手メーカーです。かつてはアパレルのトップメーカーだったレナウンですが、バブル崩壊後は業績が低迷。2010年に中国の大手繊維会社「山東如意科技集団」に買収されました。しかし、買収後も業績は回復せず、コロナ禍のあおりを受けるかたちで2020年に経営破綻。事業の先行きが不透明な状態となっています。
タカタ
タカタは、シートベルトやエアバッグなどの自動車用安全部品を製造していた会社です。かつてはエアバッグの世界シェア約2割を占める大企業でしたが、タカタ製エアバッグの異常によって事故が連続して発生。エアバッグの大規模リコールに発展し、巨額の負債を抱えたタカタは2017年に経営破綻します。その後、2018年にはKey Safety Systemsがタカタの事業を買収しました。現在タカタは、ジェイソン・セイフティ・システムズ・ジャパンとして自動車用安全部品の製造を続けています。
東芝
東芝は、扇風機や冷蔵庫、掃除機、炊飯器など、数多くの家電製品を生み出してきた総合家電メーカーです。しかし、家電分野における中国・韓国企業のシェア拡大に伴い、赤字経営が続くようになり、2015年には不正会計問題が発覚。その後、2016年に東芝の家電部門である東芝ライフスタイルはMidea傘下となりました。
MSK
MSKは、主に太陽電池の生産・販売を行っていた企業です。シャープの太陽電池の組み立て下請けを担う一方、研究開発も行っており、建材一体型太陽光発電(BIPV)の開発を進めていました。しかし、シャープが外注先を海外へと変更。MSKは発注がなくなったことで経営が停滞していました。
2006年には、中国で太陽電池の研究開発・製造販売を行っていた「Suntech power」がMSKを買収。2008年に完全子会社化しました。
ラオックス
家電量販店ラオックスは、2000年代初頭には年間2,000億円を売り上げる大手家電量販店でした。しかし既存の大手販売店に競争で敗れたことなどが理由で業績が悪化。支店の展開も不調で、経営不振に陥りました。
2009年に中国の最大手家電量販店「蘇寧電器」がラオックスを買収。家電量販店から免税店に事業を切り替えました。その後、中国人の爆買いブームが起こったことで売り上げが大きく回復。外国人観光客が利用する免税店としての立場を確立しました。
しかし一転、コロナ禍によって経営は赤字に。店舗の閉鎖や休業が相次ぐ事態となってしまいました。
オーディオ機器関連企業
山水電気とパイオニアは、高度経済成長期におけるオーディオブームの「御三家」として人気を博していました。
山水電気は、1980年代に入ってオーディオブームが去って以降、デジタル化の波に乗れず、業績が悪化。1989年に英国ポリーベック社の傘下になるも、翌年1990年には同社が倒産してしまいます。さらに翌年1991年、香港の投資ファンド「善美集団」の参加となりますが、これも1999年に倒産。嘉域集団に引き継がれることとなりますが、これも2011年に倒産。中国資本に頼ったものの親会社が次々倒産したことで破綻に追い込まれ、2014年に破綻手続きを開始。2018年には法人格が消滅しました。
また、同じく善美集団に買収されたオーディオメーカー「赤井電機」や「ナカミチ」も同様に、それぞれ2000年と2002年に民事再生法の適用を申請しています。
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中国企業の傘下になる利点とリスク
NECや富士通のパソコン事業、三洋アクアなど、業績不振が続いていた企業が中国企業の傘下に入ることで、資金面が安定し、経営が改善したというケースもあります。
一方、中国企業の傘下に入ることで、従来の経営方針を変更しなければならなかったり、親会社の急な方針転換に振り回されてしまったりするリスクもあるといえるでしょう。実際、ラオックスは中国人顧客向けのサービスに事業転換しています。
今後も中国企業による日本企業の買収は続くと考えられているので、買収による影響をきちんと推測できるようになっておくと良いでしょう。
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