このページのまとめ
- 中国はPM2.5による大気汚染が深刻な問題となっている
- PM2.5は、粒径2.5µm以下の非常に小さい粒子。ばい煙や排ガスなどから生じる
- 粒子が小さいため肺の奥まで入り込みやすく、呼吸器疾患などのリスクを高めるといわれている
- 2010年代前半には、もやがかかったような深刻な大気汚染が中国で発生した
- 大気汚染状況は改善傾向にあるものの、日によっては汚染が深刻な日もある
- 大気汚染がひどい日は、マスクや空気清浄機などで健康予防するのがおすすめ
中国渡航の予定がある方に向け、中国の大気汚染の状況や、健康への影響、汚染への予防策について解説します。コラムを読んで、どのような備えが必要かチェックしておきましょう。
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中国における大気汚染の現状
中国では十数年前から深刻な大気汚染が問題となっています。政府の取り組みもあり、近年は改善傾向にありますが、それでも依然として健康管理に注意が必要な状況は変わりありません。
中国の大気汚染で特に問題となっているのが、「粒子状物質(PM2.5など)」による汚染です。PM2.5は、2010年代に日本に飛来したことでも知られます。まずは、PM2.5の概要について確認してみましょう。
PM2.5とは?
大気汚染物質は、形態によってガス状物質と粒子状物質(PM:Particulate Matter)に分けられます。PM2.5は、大気中に浮遊する粒子状物質のうち、直径が2.5μm以下の微小粒子の総称です。PM2.5自体は特定の物質を指すものではなく、炭素成分や硝酸塩、硫酸塩、アンモニウムなど、地域や季節によってさまざまな組成となります。
PM2.5の発生源は、工場のばい煙や自動車の排気ガスといった人為由来のものと、火山や土壌から生じる自然由来のものがあります。また、排出された物質が大気中で化学反応を起こして二次的に発生するものもあり、PM2.5のような微小粒子の場合、こうした二次粒子の割合が多くなっています。
PM2.5のような微小粒子は重力の影響をあまり受けません。そのため、降雨などで取り除かれないと、空中で滞留して高濃度汚染を引き起こしてしまいます。
PM2.5の健康への影響
PM2.5は、2.5μm(マイクロメートル:1mmの1000分の1)という非常に小さい微粒子です。これは髪の毛の約30分の1、スギ花粉の約10分の1ほどのサイズ。粒子が小さいため、呼吸を通じて肺の奥や血管まで入り込み、ぜんそくや気管支炎、肺がん、心臓疾患などを発症、悪化させるリスクが高まるといわれています。また、子どもや高齢者、呼吸器・循環器に疾患をもつ人は、影響が出やすいとされているため特に注意が必要です。
参照元
在中国日本国大使館「中国における大気汚染に関する注意喚起」
中国の大気汚染の現状
中国ではPM2.5による深刻な大気汚染が発生することがあります。北京や上海といった都市部では、白く「もや」がかかったようなスモッグが発生することもしばしば。中国渡航の予定がある人は、大気汚染についての対策をしておくとベターです。
日本・中国・アメリカの環境基準
各国の汚染の基準を見てみましょう。日本・中国・アメリカの環境基準(健康を保護するうえで維持するのが望ましい基準)は以下のように設定されています。
【環境基準】
年平均値 | 1日平均値 | |
中国 | 35μg/㎥ | 75μg/㎥ |
日本 | 15μg/㎥ | 35μg/㎥ |
アメリカ | 12μg/㎥ | 35μg/㎥ |
WHO指針 | 10μg/㎥ | 25μg/㎥ |
日本のPM2.5の年平均値は、一般環境大気測定局のデータで、9.5μg/㎥(令和2年度)。全国にある多くの測定局で基準の達成がされていますが、東京や大阪といった大都市、瀬戸内海沿岸地域、九州地区などでは基準を上回ることもあります。なお、日本では日平均値が70μg/㎥を超えるような場合には、不要不急の外出を控えるよう注意喚起情報が発信されます。
中国におけるPM2.5の汚染が特に深刻だったのは2013年1月のこと。PM2.5の高濃度スモッグが発生し、中国全土の4分の1を濃霧が覆いました。当時の北京のPM2.5の最大観測値が、993μg/㎥。約3週間にわたって深刻な状況が続き、中国全土約6億人が影響を受けたとされています。
政府の取り組み等により、中国におけるPM2.5の汚染は年々改善され、北京でも平均42μg/㎥(2019年)程度まで濃度が下がってきました。しかし、日によっては70μg/㎥以上に達することもあるため、依然として注意が必要といえます。
参照元
在中国日本国大使館「中国における大気汚染について」
中国の大気汚染の原因は?
中国は、経済発展や都市化によって、大気汚染問題が深刻化してしまった背景があります。大気汚染の原因は、主に「石炭の大量消費」と「自動車販売数の増加」の2つです。
中国は長年、エネルギー消費の約7割を石炭に依存してきました。そのうえ、製鉄やセメント工場などでも石炭を大量に消費してきたため、石炭燃焼によるPM2.5が大量に発生したのです。また、地方の一般家庭で使用されるストーブは石炭燃料のものがほとんど。そのため、冬場になると大気汚染が悪化するとされています。
ほかにも、自動車販売数の増加も原因の一つ。自動車販売数の増加によってガソリン・ディーゼルの消費が増えたにも関わらず、排ガス規制が緩い状態が続いたため、大気汚染が進みました。
昨今は脱硫装置の取り付けなど対策が進み、中国の大気汚染は改善されつつあります。ただし、日によっては視界の悪い日や、PM2.5濃度の高い日もあるので、注意しましょう。
大気汚染への予防策
中国滞在の際は、PM2.5への対策をしておくことをおすすめします。具体的には以下のような予防対策をすると良いでしょう。
マスクを着用する
大気汚染への一般的な対策は、マスクを着けることです。一般の不織布マスクでもある程度の予防効果が見込めますが、PM2.5のような粒子状物質から身を守るには、PM2.5に対応したマスクを選ぶことをおすすめします。具体的には、米規格N95や、それに相当する日本規格DS2に準じたマスクを選びましょう。また、顔にあった大きさのマスクを、隙間なく着用することも重要です。
屋外での運動を控える
大気汚染のある日は屋外での運動を活動を避けましょう。また、出入り口や外気に触れているエリアは清浄でない可能性があるので注意が必要です。
空気清浄機を設置する
室内では空気清浄機を使用しましょう。空気清浄機は部屋の大きさに対応したもの、PM2.5に対応するものを選び、定期的にフィルターを清掃することも必要です。
外気の侵入を防ぐ
大気汚染が深刻な日には、窓やドアの開閉は控えましょう。また、外気が入るような隙間は、テープを貼って塞ぐと効果的です。
リアルタイム情報をチェックする
PM2.5の濃度情報は、Webサイトやスマートフォンアプリで容易に確認できます。リアルタイム情報を確認して、予防対策をするようにしましょう。また、市販のPM2.5簡易測定キットを使用すれば室内の汚染状況を確認できて便利です。
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