このページのまとめ
- 中国のIT市場が発展した背景には、改革開放政策やデジタル化への積極的な姿勢がある
- 中国にはBATHや京東グループ、美団点評など名の知れているIT企業が数多くある
- IT業界は高給な傾向にあり、民間企業では全体平均よりも約3万元も高くなっている
- 中国のIT業界は、独占禁止などの理由から規制が強化されている業界でもある
中国のIT業界の成長速度は目を見張るものがありますが、規制強化による株価の下落が起きたことでさらなる注目が集まっています。このコラムでは、「どこの国も追いつかない」と言われるほどの速さで発展した中国のIT業界について詳しく解説します。なお、中国で最も高いと言われるIT業界の給与事情や就職時の注意点についても触れているので、中国経済や中国での就労に興味がある方は参考にしてみてください。
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成長し続ける中国のIT市場とその背景
中国は世界的にも経済成長率が高く安定している国として知られており、中でもIT業界は世界トップクラス。EC市場においては売上高が米国の3倍以上にも上ります。加えて、すでに世界最大の市場を築き上げているのにも関わらず、2018年から2019年の1年間だけで27.3%もの成長を見せました(参考:eMarketer「Global Ecommerce 2019」)。新型コロナウイルス感染症が流行し始めた2020年の第1四半期に関しても、「昨年と同様の市場規模であり、オンライン売上高は5.4ポイント増加」と中国商務部が発表しており、いかに中国のIT市場が安定したものなのかが分かるでしょう。
デジタル大国と呼ばれるまでに中国が成長した背景については、以下で詳しく解説します。
改革開放政策による外資の流入
鄧小平(とうしょうへい)が1978年に提唱した「改革開放」が、中国経済の発展に拍車をかけたと言われています。改革開放は、中国経済の進展のために打ち出された政策です。それに伴い、外資との取引が優遇される地区「経済特区」や「経済技術開発区」も設置され、中国国内には多くの外資が進出するようになりました。特に発展したのは製造業であるものの、IT技術に関しても海外から多くの流入があり、中国のデジタル社会の拡大に貢献し続けています。
中国では度重なる経済政策・構想が打ち出されている
改革開放後も発破をかけるように経済政策・構想が打ち出されていることも、中国経済の発展の理由として挙げられます。改革開放により継続的な高成長が見られたものの、2013年には習近平国家主席によって「一帯一路」構想も提唱。一帯一路は、いわば“現代版シルクロード”であり、アジアや欧州との貿易を活発化する目的で打ち出された広域経済圏構想です。
習近平国家主席はデジタル化に特に力を入れており、上海市では2021年に「关于全面推进上海城市数字化转型的意见(意訳:上海市のデジタル変革を包括的に推進するための意見)」というガイドラインが発表されたほど。各分野の発展において積極的な姿勢が、世界トップのデジタル大国を生み出したと言えるでしょう。
スマホユーザー数の増加と電子決済サービスの普及
デジタルツールの普及率の高さについても、中国のIT業界における発展の要因として挙げられます。デジタル化に力を入れてきた中国ですが、実際に成果も出ており、中国業界情報ネットワークによると2016年の時点でスマートフォンの普及率が96%を突破。総務省が発表した2016年における日本のスマホ普及率は、56.8%であることを考えると、いかに中国のIT発展速度が速いのかが分かります。
なお、近年では世界的に電子決済も普及しつつありますが、 総務省「情報通信白書平成30年版」によると日本でモバイル決済を使用した人が6.0%であるのに対し、中国では98.3%。
デジタルツールの普及率が高ければ、その分IT技術の革新が求められることになり、結果的に業界の発展へとつながります。
中国国内で有名なIT企業一覧
中国には、BATHをはじめとする多くの大手IT企業があります。BATHは、Baidu・Alibaba・Tencent・HUAWEIの頭文字を並べたものであり、米国のGAFAに迫る勢いで成長をしている四大企業です。
中国インターネット協会が発表した「2019年中国互联网企业100强榜单揭晓(2019年IT企業ランキング100)」に基づき、中国国内で有名なIT企業について1~10位までを以下に一覧で解説します。
順位 | 企業名(中国語) | 企業名(日本語) |
1 | 阿里巴巴(中国)有限公司 | アリババ(中国)株式会社 |
2 | 深圳市腾讯计算机系统有限责任公司 | 深センテンセントコンピュータシステム株式会社 |
3 | 百度公司 | バイドゥ株式会社 |
4 | 京东集团 | 京東(ジンドン)グループ |
5 | 浙江蚂蚁小微金融服务集团股份有限公司 | 浙江アントスモールアンドマイクロファイナンシャルサービスグループ株式会社 |
6 | 网易集团 | 網易(ネットイース)グループ |
7 | 美团点评 | 美団点評(びだんてんぴょう) |
8 | 北京字节跳动科技有限公司 | 北京ByteDanceTechnology Co.、Ltd。 |
9 | 三六零安全科技股份有限公司 | 360セキュリティテクノロジー株式会社 |
10 | 新浪公司 | シーナコーポレーション |
2019年にトップ100としてリストアップされたIT企業のインターネットビジネス収益は2.75兆円にもおよび、中国のデジタル経済へ大幅に貢献しています。
中国インターネット協会は上記ランキングのほかに成長率トップ20のIT企業も選出。トップ20の企業は、設立期間が短かったり、迅速な資金調達を可能としていたりするなど、トップ100の企業とは異なる傾向が見られることから、今後中国のIT市場に革新をもたらす存在として期待が高まっています。
中国ではIT企業の平均年収が高い
年々勢いを増している中国のIT市場は、高給であることが多く、平均給与は民間企業・非民間企業ともに業界トップとなっています。革新的で給与の高いIT業界は、現地の大学生からも人気が高く、2019年・2020年ともに20%以上の学生が志望するほど(参考:58同城「2019(2020)中华英才网第十八届中国大学生最佳雇主调研综合报告」)。中国におけるIT業界の具体的な給与については、以下で詳しく解説します。
民間企業
中国国家統計局によると2019年の都市部にある「情報伝達、ソフトウェアおよび情報技術サービス産業」のうち民間企業に勤める人の年間平均給与は、85,301元です。全業界の年間平均給与は53,604元であり、IT業界はそれを約3万元も上回る結果となりました。なお、以下の表を見ても、他の業界よりも高給であることが分かります。
【2019年の中国都市部における産業別・民間企業の年間平均給与(一部抜粋)】
(単位:元・%)
業界 | 2019年 | 2018年 | 成長 |
全体平均 | 53,604 | 49,575 | 8.1 |
情報伝達、ソフトウェアおよび情報技術サービス産業 | 85,301 | 76,326 | 11.8 |
科学研究および技術サービス産業 | 67,642 | 61,876 | 9.3 |
金融業界 | 76,107 | 62,943 | 20.9 |
不動産業界 | 54,416 | 51,393 | 5.9 |
製造 | 52,858 | 49,275 | 7.3 |
なお、上記のデータを見ると、給与額だけでなく成長率も高いことが分かります。トップを走り続けるIT業界ですが、今後さらなる伸びも期待できるでしょう。
非民間企業
中国国家統計局によると2019年の都市部にある「情報伝達、ソフトウェアおよび情報技術サービス産業」のうち非民間企業に勤める人の年間平均給与は、161,352元です。全業界の年間平均給与は90,501元であり、民間企業よりもさらに差が大きくなっています。他の業界との比較は以下の通りです。
【2019年の中国都市部における産業別・非民間企業の年間平均給与(一部抜粋)】
(単位:元・%)
業界 | 2019年 | 2018年 | 成長 |
全体平均 | 53,604 | 49,575 | 8.1 |
情報伝達、ソフトウェアおよび情報技術サービス産業 | 161,352 | 147,678 | 9.3 |
科学研究および技術サービス産業 | 133,459 | 123,343 | 8.2 |
金融業界 | 131,405 | 129,837 | 1.2 |
不動産業界 | 80,157 | 75,281 | 6.5 |
製造 | 78,147 | 72,088 | 8.4 |
非民間企業では、民間企業よりも成長率が低めである一方、給与は全体的に高め。特に、外資系企業の給与が高いとされています。中国で働くことを視野に入れていて、さらに平均よりも高い給与を望む場合はIT業界への就職を考えるのが得策でしょう。
中国でIT企業への就職を考える際の注意点
先進的で人気が高い中国のIT企業ですが、規制が強化されていたり、労働問題が取り沙汰されていたりする一面もあります。常に先頭を走る中国のIT業界への就職は魅力的ではあるものの、以下で解説する注意点についてよく理解したうえで判断しましょう。
政府から厳しい規制がかかっている業界でもある
中国では、アリババやテンセントなどに対して度々規制がなされています。立ち入り調査や広告禁止、罰金処分など相次ぐ取り締まりが実施。政府からの締め付けは株価の下落につながり、成長率に関しても鈍化が見込まれるとされています。独占行為の回避や貧富の差の拡大防止が理由とされていますが、大手IT企業へのけん制の意図もあると言われています。いずれにせよ今後も規制が強化され続ければ、事業縮小や解体も危ぶまれ、高給で安定した業界とは言い難い状態になる可能性も否定できません。
996勤務が問題視されている一面もある
IT業界の急速な発展が注目される一方で、996勤務と言われる長時間労働の問題があるのも事実です。996勤務とは、“朝9時~夜9時まで週6日”働く勤務体制のこと。中国労働法第36条では、「労働は1日8時間以内、週の平均労働時間が44時間を超えてはならない」と定められており、996勤務は違法ということになります。加えて、残業代が支払われなかったり、実際には996勤務よりも長い勤務だったりすることもあり、反発や批判の声が多く挙がりました。IT業界に限らず、中国での就職を考えている方は、労働環境に注意して求人を探すようにしましょう。
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