このページのまとめ
- 中国の個人所得税は日本の所得税にあたる税金
- 個人所得税の計算は、中国の居住者か非居住者かで異なる
- 個人所得税は超過累進課税で、税率は3~45%
- 個人所得税と社会保険料が差し引かれ、額面の約8割ほどが手取りとなる
- 賞与は年に1回のみ税金の優遇措置がある
中国で働きたい方に向け、個人所得税の税率と手取りの計算方法を紹介します。コラムを読んで、中国の税金制度について知っておきましょう。
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中国で働くとかかる個人所得税(所得税)
中国で働いて給与所得を得ると「個人所得税」が課税されます。これは日本でいう所得税にあたる税金です。
個人所得税は、会社からもらう給与や、商売をして得た所得に対して課税されます。日本の企業に所属する出張者であっても、中国で働けば基本的に中国の所得税が課せられます。
所得の種類によって規定があるため、このコラムでは中国に派遣された日本人の税金について紹介します。
居住者か非居住者かで税金計算が異なる
個人所得税の計算方法は、「居住者」か「非居住者」かによって計算が異なります。それぞれの定義と、課税対象となる条件は、以下のとおりです。
【居住者】
- 中国国内に住所を有する
- 住所はないが滞在期間が183日超え
居住者 |
滞在期間 |
国内源泉所得 |
国外源泉所得 |
||
国内雇用者が支給・負担 |
国外雇用者が支給・負担 |
国内雇用者が支給・負担 |
国外雇用者が支給・負担 |
||
183日超え6年未満 |
課税 |
非課税 |
|||
6年超え |
課税 |
【非居住者】
- 中国に住所がなく居住もしていない
- 中国の滞在期間が183日以下
非居住者 |
滞在期間 |
国内源泉所得 |
国外源泉所得 |
||
国内雇用者が支給・負担 |
国外雇用者が支給・負担 |
国内雇用者が支給・負担 |
国外雇用者が支給・負担 |
||
90日以下 |
課税 |
免税 |
非課税 |
||
90日超え183日未満 |
課税 |
非課税 |
|||
短期滞在者 |
免税 |
非課税 |
「国内源泉所得」とは中国で働くことで得た給与などのことです。駐在員の場合、日本払い給与も含まれます。また、国外源泉所得とは日本の不動産収入などのことです。
中国に住居を有する人は「居住者」となり、国内外の所得について課税されます。日本の不動産収入等について課税されることもありますが、日本と二重課税になるので確定申告をして還付を申請します。
滞在期間が一納税年度で183日を超える人も同様に居住者となり、国内外の所得について課税されます。ただし、滞在期間が6年以下の場合、国外源泉所得については非課税になります。
中国に居住しておらず、滞在期間が一納税年度で183日以下の人は「非居住者」となり、国内の源泉所得のみが課税されます。また、短期滞在者免税が適用される人は勤務国での課税が免除されます。
短期滞在者免税とは?
以下の要件を満たす人は短期滞在者免税が適用されます。
【短期滞在者免税の要件】
- 中国での滞在期間が一納税年度(1/1~12/31)を通じて183日以内
- 報酬が、中国の居住者またはこれに代わる者から支払われていないこと
- 報酬が、日本法人が中国国内に有する恒久的施設(PE)または固定的施設に負担されていないこと
つまり滞在期間が短く、かつ報酬すべてが日本法人から支払われていれば基本的に要件を満たせます。
【短期滞在者免税の例外】
高級管理職には、短期滞在者免税が適用されません。高級管理職とは、現地法人の総経理や副総経理、各職務長など会社の管理職のことです。
また、PE課税の認定を受けた駐在員事務所は、183日未満であっても課税の対象になります。PE(恒久的施設)は外国法人が他国で事業を行うために設置する拠点のことです。工場や採掘場などがPEに該当します。
そのほか、滞在期間が183日を超える場合は納税義務が生じます。この際、超過日数分の税金だけでなく、滞在日数分の納税が必要になるため注意が必要です。
個人所得税の税率
中国の個人所得税は、日本と同じ超過累進課税が用いられています。課税所得が一定の数字を超えたとき、超えた部分について税率が上がる仕組みです。
中国の個人所得税の税率表は以下のようになっています。
【総合所得税率表】
年度課税所得額 | 税率 | 速算控除額 |
36,000元以下 | 3% | 0 |
36,000元超~144,000元以下 | 10% | 2,520元 |
144,000元超~300,000元以下 | 20% | 16,920元 |
300,000元超~420,000元以下 | 25% | 31,920元 |
420,000元超~660,000元以下 | 30% | 52,920元 |
660,000元超~960,000元以下 | 35% | 85,920元 |
960,000元超え | 45% | 181,920元 |
【月次税率表】
課税所得額/月 | 税率 | 速算控除額 |
3,000元以下 | 3% | 0元 |
3,000元超~12,000元以下 | 10% | 210元 |
12,000元超~25,000元以下 | 20% | 1,410元 |
25,000元超~35,000元以下 | 25% | 2,660元 |
35,000元超~55,000元以下 | 30% | 4,410元 |
55,000元超~80,000元以下 | 35% | 7,160元 |
80,000元超え | 45% | 15,160元 |
個人所得税の計算方法と手取り
個人所得税は日本と同じように毎月の給料支給時に差し引かれます。確定申告が必要になることもありますが、年末調整はありません。
個人所得税の税額は以下の計算で求められます。
- 課税所得✕税率ー速算控除額
- 課税所得=(給与支給額ー基礎控除額ー社会保険料ー専門付加控除)
具体的な計算方法は、居住者と非居住者で異なり、それぞれ以下のようになります。
居住者の場合
上記の年収ベースの「総合所得税率表」を用いて税額を計算します。累計予納法に基づき計算するので、以下のような計算式で算出します。
- 当期予納すべき税額=(予納すべき課税所得額の累計✕税率ー速算控除額)ー予納済み税額の累計
- 予納すべき課税所得額の累計=収入累計ー免税収入累計ー基本控除額累計ー専門控除額累ー専門付加控除額累計ーその他の控除額累計
例)月額給与20,000元、子女教育控除月1,000元
1月:
(給与20,000ー基礎控除5,000ー子女教育控除1,000)=課税所得14,000元
「総合所得税率表」では、課税所得14,000元の税率は3%で速算控除額は0
14,000元✕税率3%ー速算控除額0=420元
2月:(20,000✕2ー5,000✕2ー1,000✕2)✕3%ー予納済420=420元
3月:(20,000✕3ー5,000✕3ー1,000✕3)✕10%ー速算控除額2520ー420-420=840元
4月:(20,000✕4ー5,000✕4ー1,000✕4)✕10%ー2520ー420ー420ー840=1,400元
年末になるにつれ、給与累計額が上がっていくので課税所得の累計額も上がっていきます。そのため税率の段階も上がり、税額が増えていくのです。また、地域によっては以下の非居住者用の税率テーブルで税額を算出している地域もあります。
非居住者の場合
非居住者の税率計算は「月次税率表」を用い、簡単に算出できます。
例)月額給与20,000元、子女教育控除月1,000元
(20,000ー基礎控除5,000ー1,000)✕20%ー1,410=1390元
手取り額は、支給額から社会保険料と個人所得税を差し引くことで求められます。
社会保険料は地域ごとに運用が異なりますが、最終的な手取り額は日本と同様額面の8割程度になることが多いようです。
海外赴任者はグロスアップ計算を行うことが多い
個人所得税は、給与をもとに控除額を差し引いたうえで税率をかけて算出する仕組みです。これは総支給額が決まっており、それを中心にした計算といえます。
しかし、海外赴任者の場合は逆で、手取り額を決定してから課税額を逆算し、そのうえで総支給額を決定する方法を取ることが多いです。これをグロスアップ計算といいます。
海外の所得税は日本と異なるため個人が支払うのは難しく、また日本と税率が異なると日本で働く社員との差が生まれてしまいます。そのため、手取り額を保証するグロスアップ計算が用いられるのです。グロスアップ計算を行う場合は「日本で働いていたら」という仮定で日本と同水準の「みなし税(ハイポタックス)」を設定し、仮想の手取りを計算します。
個人所得税の控除項目
個人所得税の税額は、課税所得額に税率をかけることで算出できます。課税所得額は、所得から社会保険料を含む各種控除項目を引いたものです。外国人労働者の基礎控除額は5,000元/月に設定されています。
基礎控除以外の専門付加控除の控除額については以下のとおりです。
・子女教育費
年12,000元/子(1,000元/月)
親双方50%ずつ、または片方100%控除。満3歳~博士課程まで
・継続教育費
4,800元/年(月400元)学歴継続教育
3,600元/年 専門技術職業資格控除
・重大疾病医療
個人が負担する15,000元を超える部分について、年80,000元を上限に実学控除
・住宅ローンの利子費用
年12,000元/年(1,000元/月)
納税者本人または夫妻のいずれか 1 人の所得から控除
・住宅家賃
18,800元/年(1,500元/月):直轄市などの都市
13,200元/年(1,100元/月):戸籍人口100万人超えの都市
9,600元/年(800元/月):戸籍人口100万人以下の都市
・高齢者扶養
24,000元/年(2,000元/月)
一人っ子は単独控除可
兄弟姉妹は約定分担可
なお、専用付加控除を適用する場合は、必要な情報が記載された書類を提出しなければなりません。
賞与にかかる個人所得税は年に1回優遇がある
賞与が支払われると、原則、当該月の収入に合算して税金計算をするので、税率が上がって税額が増えてしまいます。
そのため、年に1回分の賞与については優遇措置があります。賞与額を12ヶ月で分割し、月次税率表を用いて適用税率を決定するのです。
例)賞与60,000元
60,000÷12=5,000
「月次税率表」では、課税所得5,000の場合、税率は10%・速算控除額は210元
60,000✕10%-210=税額5790元
なお、年2回目以降の賞与については優遇はありません。
参照元:
日本貿易振興機構(ジェトロ)「中国 税制」「中国の個人所得税法改正と日系企業への影響(2021年3月)」
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