このページのまとめ

  • ベトナムの主要産業は「農林水産」「鉱工業・建設業」「サービス業」
  • 各産業のGDPは農林水産業12%、鉱工・建設業37%、サービス業41%
  • 2020年までのベトナム産業は各産業でプラス成長率をキープしていた
  • 2021年はコロナ禍の影響でマイナス成長となったが今後は復調を期待されている
  • ベトナムに進出している日本企業の46.8%が今後の事業の拡大を視野に入れている

海外企業の参入先として人気の高いベトナム。経済成長が著しいベトナムには、日本からも自動車業、飲食業、建設業と分野を問わず数多くの企業が進出しています。コラムではベトナムの経済を支える主要産業について詳しく解説。2021年時点での各産業におけるGDPや、ここ数年の成長率の推移をもとに、ベトナムの経済事情を紐解いていきましょう。

ベトナム経済を支える3つの主要産業

ベトナムでは「農林水産」「鉱工業・建設業」「サービス業」の3つが基幹産業となり経済を支えています。それぞれ詳しく見ていきましょう。

1.農林水産業

ベトナムの地形は南北に向かって細長く伸びたS字のような形をしています。S字の底の部分にあたる南部地域には広大なメコンデルタ地帯があり、肥沃な土地に加えて水利に恵まれているのが特徴。南部地域はベトナム国内のコメの生産において最大規模の生産量を誇ります。

 日本貿易振興機構(JETRO)が発表した農業・水産業関連企業リストによると、コメはベトナムの農林水産物の中でもっとも生産量の多い作物です。以下は同資料内のデータの一部(同資料p.3参照)をまとめた表になります。

2018 年(千 t)* 
全国前年比(%)メコンデルタ南東地域
コメ(籾)43,979.2102.924,441.91,423.0
トウモロコシ43,979.296.0189.5450.8
サツマイモ1,368.6101.1559.59.7

データから分かるとおり、メコンデルタでは全国のコメの生産量の半分以上を担っています。

また、コメの需要はベトナム国内のみにとどまりません。農林水産省が発表したベトナムの農林水産業概況によると、コメはベトナム輸出品の中でコーヒーに次いで高いシェア率を獲得しています(2017年時点)。なお、ベトナムのコーヒーの生産量は世界第2位。ブラジルに次ぐ生産量の高さです。

品目名輸出額(百万 US ドル)シェア(%)
コーヒー(生豆) 2,66320.9
コメ2,28717.9
殻つきカシューナッツ 1,98615.5 
こしょう9517.4
天然ゴム(乾燥)7796.1

以上の結果から、ベトナム農業を牽引しているのはメコンデルタを抱える南部地域といえるでしょう。一方で、同地域では農業近代化の遅延が課題となっています。近代化が進まないのは家族単位で経営している小規模農家が多いため。現在では生産構造の改革、ブランドの構築や品質の高い農作物の開発などに注力する方針を掲げています。

2.鉱工業・建設業

第二次産業と呼ばれる鉱工業・建設業において、ベトナムは日本と「ベトナム工業化戦略」における協力関係にあるのが特徴。近年、産業インフラの確保先としてベトナムへの関心が世界的に高まっています。日本はベトナム工業において「電子」「造船」「農業機械」「農水産品加工」「環境・省エネ」「自動車・その部品」の6産業に注力し、創設や強化を支援してきました。産業政策の先駆者である日本のノウハウを提供することで、ベトナムでのビジネスチャンスの増加を狙っています。いわば戦略的パートナーシップを結んでいるといえるでしょう。建設業においても同様に、日系企業の投資参入先としてベトナムは注目を集めています。

また、日本貿易振興機構(JETRO)が実施した2020年度 海外進出日系企業実態調査(p.24)によると、海外に進出した「鉄・非鉄・金属」「輸送機器部品」を扱う日系企業の中で、「今後1~2年の間の事業拡大を検討する」と回答した企業がもっとも多いのはベトナムでした。

<鉄・非鉄・金属>単位(%)

ベトナム46.7
タイ32.4
中国26.5
インドネシア21.4 

<輸送機器部品>単位(%)

ベトナム42.9
インド40.0
中国38.7
インドネシア29.1
タイ23.0

こういった結果からも、ベトナムの第2次産業における日本企業の役割は大きいと分かります。

3.サービス業

サービス業はベトナムの国内総生産(GDP)の構成比においてもっとも割合の大きな産業です。GDPについては次項で詳しく後述しますが、経済成長の著しいベトナムに進出する海外企業の数は多く、特に外食産業については今後も増加が見込まれています。

2010年代以降、日本からも大手外食産業がベトナムへと参入しました。近年、日本の外食産業では労働力不足が大きな課題となっています。深刻化する人手不足を補うため、ベトナムに進出した飲食店ではベトナム人材の採用・育成に注力する企業も増えているようです。

産業別に見るベトナムのGDP割合

ベトナム統計総局が発表した「2021年の第2四半期と6か月間のプレスリリースの社会経済状況」によると、2021年上半期の主要産業分野別GDP割合は以下のとおりの結果となりました。

農林水産業12.15%
鉱工業・建設業37.61%
サービス業41.13%

出典:総務省統計局外国政府の統計機関-ベトナム統計総局ページ内発表より引用加工

また、日本貿易振興機構(JETRO)が発信したベトナム統計総局の発表をもとに前年(2020年)と比較した産業ごとのGDP成長率を追っていくと、2021年7~9月(第3四半期)の業種別の成長率においては、プラス成長をキープしたのは農林水産業(+1.0%)のみ。鉱工業・建設業は5.0%、サービス業は9.3%のマイナスでした。さらに、産業全体の実質GDP成長率は前年比同期比よりもマイナス6.2%と発表されています。

ただし、この結果は2020年に世界的に流行した新型コロナウイルス拡大の影響を受けたもの。活動制限が緩和された10月以降の第4四半期(10~12月)においては、復調への期待が高まっているようです。

 近年のベトナム産業の成長率の推移

ここでは在ベトナム日本大使館経済班が発表した「2020年ベトナム経済統計(p.4)」をもとに近年のベトナム産業の成長率の推移を詳しく解説します。主要産業における2017~2020年までのGDP成長率を分野別にまとめた以下の表を見ていきましょう。

部門2017年2018年2019年2020年
農林水産2.903.762.012.68
鉱工業・建設業 8.008.858.903.98
サービス業 7.447.037.302.34

先に触れたとおり2020年は新型コロナウイルスの流行を受け、どの産業も4年間でもっとも水準が低い結果となりました。とはいえ、ASEAN(東南アジア諸国連合)に加盟している他国においてマイナス成長が目立つ中、ベトナムは産業全体でプラス成長をキープできています。

また、各産業ごとの詳細を追ってみると、プラス成長をけん引したのは前年比より10.58%の増加率となった保健・社会サービス部門。そのほか製造業は5.82%、建設業は6.76%と、この2部門も好調に伸びています。

ベトナムに進出している日系企業の今後の事業展開

日本貿易振興機構(JETRO)が実施した「2020年度 海外進出日系企業実態調査(p.25)」によると、ベトナムに進出している日本企業901社のうち413社(46.8%)が、今後1~2年の間における事業の拡大を視野に入れています。事業を拡大する理由(複数回答可)は以下の結果となりました。

単位(%)

現地市場での売上増加65.9
成長性、潜在力の高さ44.1
輸出拡大による売上増加48.7
高付加価値製品・ サービスへの高い受容性15.0
取引先との関係20.3

なお、事業拡大を検討していない企業についても、全体の47.1%は「現状維持」と答えています。今後もベトナムにおける日本企業の投資は加速していくと考えられるでしょう。

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