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このページのまとめ

  • 地理的な利便性が大きいなどベトナムでビジネスを行うメリットは多くある
  • まだインフラが整備されていないなどベトナムでビジネスを行うデメリットもある
  • ベトナムでビジネスを行うにはベトナム人の文化への配慮が必要

東南アジア諸国の中でも経済成長が盛んで、多くの海外企業が進出しているベトナム。海外拠点を中国に集中させるリスクを回避するため、近隣の国に第2の拠点を設ける「チャイナ・プラスワン」の有力候補としても注目を浴びています。ベトナムは親日国であることや人件費が安いことなど日本企業や日本人がビジネスを行うのにはメリットが大きい国です。このコラムを読んでベトナムでのビジネスのメリット・デメリットや商習慣について理解を深めてみてください。

ベトナムでビジネスを行うメリット

多くの日本企業が進出しているベトナム。ベトナム進出を目指す企業が多いのは下記のようなメリットがあるからです。ベトナムでビジネスを行う主なメリットを紹介します。

経済成長が著しい

ベトナムの国内総生産(GDP)成長率はASEAN諸国と比較しても、高い水準を誇っています。日本貿易振興機構(JETRO)によると、2019年度のGDP成長率は7.0%とASEAN諸国の中でも最も高い成長率を記録しました。2020年度の成長率は2.9%と、ドイモイ(刷新)政策を採択した直後の1987年の成長率2.5%に次ぐ過去2番目の落ち込みだったものの、ASEAN諸国では唯一のプラスの成長率を維持。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、インドネシア、シンガポール、マレーシア、タイ、フィリピンがマイナス成長となるなか、高いポテンシャルを見せています。2019年度、2020年度のASEAN主要国のGDP成長率は下記の通りです。

ベトナムインドネシアシンガポールマレーシアタイフィリピン
2019年度7.05.01.34.32.36.0
2020年度2.9△ 2.1△ 5.4△ 5.6△ 6.1△ 9.5

参照元:日本貿易振興機構-「ビジネス短信」添付資料

国の政策でも外資企業の進出を後押ししている

ベトナムは2007年に世界貿易機関(WTO)にも加盟し、貿易の自由化が進んでいます。また、もともと共産党による一党体制だったことから、これまでは国有企業が各産業のシェアの多くを占めていいたものの、近年は複数の自由貿易協定の発効やインフラ整備などにより、外資企業の誘致を進めています。そのため、日本企業や他国の海外進出先として注目されています。

参照元:外務省-ベトナム基礎データ

若くて質のいい人材が豊富で人件費が安い

ベトナムの平均年齢は約31歳で、2020年度の人口は約9,730万人。全年代の中で25~29歳の占める割合が最も高く、若い労働人口が多い国です。また、儒教の教えが強く、真面目で勤勉な国民性や95.8%と高い識字率(2019年)から、質の高い人材の確保が期待できます。

若くて質のいい人材が豊富にいる一方、物価や人件費は安いのが特徴。物価は近年上昇しつつあるものの、日本と比べると3分の1ほどです。世界の生活費を比較するウェブサイト「Numbeo」で、アメリカ合衆国・ニューヨークを100とした場合の世界各都市の物価を比較したデータの中の「生活費プラス家賃指数」においては、東京・日本が67.72なのに対して、ベトナム・ハノイは25.42となっています。物価が安いことから、人件費も安く抑えることが可能です。ベトナムの日本貿易振興機構(JETRO)によると、2020年度のベトナム国内の1人当たりの月間平均所得は4230万ドン、日本円に換算すると2万1150円と日本と比較してかなり安いことが分かります。(日本円への換算は1ドン=0.005円として計算)そのためIT企業のオフショア開発や製造業の拠点として多くの企業が進出しています。

参照元:日本貿易振興機構-ベトナム 教育(Edtech)産業調査

Numbeo-2021年度半ばの都市別の生活費と家賃指数

日本貿易振興機構-「ビジネス短信」添付資料

親日国である

ベトナムは親日感情が強く、日本への信頼度が高い傾向にあります。外務省の海外における対日世論調査(2019年度)によると、「あなたの国にとって、現在重要なパートナーはどの国ですか」という質問にベトナム人の回答者の68%が「日本」と回答しました。ベトナムでは日本製品のクオリティーの高さに定評があり、中でもホンダやヤマハのバイクは交通手段にバイクを使うベトナム人に親しまれています。また、ベトナムでは第一外国語として日本語が取り入れられており、国際交流基金によれば、2020年10月時点で中学校78校、高校33校で日本語教育が行われています。

参照元:外務省-海外における対日世論調査(ASEAN)

国際交流基金-日本語教育 国・地域別情報 ベトナム(2020年度)

地理的な利便性が大きい

日本から見たとき、ベトナムは東南アジアやインドシナ経済圏に進出するときに海路の重要な拠点としての役割を果たしています。また、陸路では中国に近く、すでにあるサプライチェーンを活用できるなど地理的な利便性が大きいところもメリットです。近年、海外拠点を中国に集中させるリスクを回避するため、日本企業では近隣の国に第2の拠点を設ける「チャイナ・プラスワン」という経営戦略を取る動きが盛んになっています。中国国外へ生産移管を行う際も、原材料や部品の中国依存を変えるのは難しいため、陸路で輸送ができるベトナムは有力な移転先候補に挙がるでしょう。

ベトナムでビジネスを行うデメリット

ベトナムは今後ますます経済発展していくことが予想されており、ビジネスチャンスのある国ですが、交通インフラが整備されていない、離職率が高いなどデメリットもあります。

インフラが整備されていない

ベトナムはもともと農業国でしたが、1986年に市場経済システムの導入や対外開放化を目的とするドイモイ(刷新)政策が採択された後、1990年代、2000年代に経済が急成長を遂げました。そのため、経済発展にインフラ整備が追いつかず、公共交通機関や水道・電気などのインフラが未発達です。鉄道は南北を縦断する南北統一鉄道のみで、バスは一部の地域しか通っていません。ベトナム人の多くはバイクを利用していますが、道路が整備されておらず、交通ルールも遵守されていない状況です。また、浄水技術が発達していないことから、水道水を飲むことも難しく、停電も頻発しています。便利な環境、清潔な環境に慣れている日本人からすると、不便に感じたり、衛生面が気になったりすることもあるでしょう。

参照元:外務省-ベトナム基礎データ

完全な自由主義経済とはいえない

共産党の一党体制でありつつ、市場経済も取り入れているベトナム。世界貿易機関(WTO)にも加盟後は政府の影響力は減っているようですが、まだ完全な自由主義経済とはいえない状況です。アメリカのシンクタンクのヘリテージ財団が発表した2021年度版「経済自由度指数(Index of Economic Freedom)」によると、ベトナムの経済自由度は世界178カ国・地域の中で90位で、初めて「中程度の自由」のグループに加入しました。経済自由度は上がってはいるものの、急に変わる政府の方針に左右されることもあるので注意が必要です。

参照元:ヘリテージ財団-2021年度版「経済自由度指数(Index of Economic Freedom)」

離職率が高い

ベトナム人の離職率は高く、1年間に20%もの人材が離職するとも言われています。ベトナム人は真面目で勤勉な国民性でありながら、よりスキルアップができて条件の良い企業を求めて転職する傾向にあります。企業としてはベトナム人の離職を防ぐために、より良い待遇や労働環境を用意したり、コミュニケーションを密に取ったりと工夫する必要があるでしょう。

ベトナムに進出している日本企業の動向

次にベトナムに進出している企業の動向についてお伝えします。日本貿易振興機構によると、2020年12月時点でベトナムに進出している日本企業は1,985社。メーカーやIT企業、保険・金融など幅広い業界の企業が進出しており、その数は年々増えています。

参照元:日本貿易振興機構–概況・基本統計

ベトナムでビジネスを行うときに知っておきたい注意点・商習慣

実際にベトナムでビジネスを行うときに知っておきたい注意点や商習慣をご紹介します。

家族を重視する文化を理解する

ベトナム人は両親や親族も含めて家族をとても大切にします。一番優先するのは仕事ではなく家族であり、仕事後は家族と過ごすため、残業はせずに定時で家に帰ります。仕事のためにプライベートの時間を犠牲にするという日本人の思考は通用しません。また、ベトナム人は家族や親戚と集まるために、年に1回は長期休暇を取得するので、ベトナムでの有給休暇の取得率はほぼ100%。ベトナムでビジネスを行う際は、こうした家族を大切にする文化を理解し、休みやすく就業時間内に仕事が終わるような環境を整備する必要があるでしょう。

ベトナム人のプライドを尊重する

ベトナム人は実はプライドが高いところがあります。同僚や部下など大勢の前で叱られると、ベトナム人のプライドを傷つけてしまうため、ベトナム人を注意するときは個別に呼んで指摘する方が良いでしょう。また、ベトナム人は論理的に物事を考える傾向があり、「なぜこの仕事をやるか」「このやり方を取るとどんなメリットがあるのか」を考えながら働きます。そのため、納得できない仕事ややり方であれば、仕事自体を受けない可能性も。仕事を依頼するときは背景からきちんと説明することが必要です。

報・連・相の習慣を根付かせる

日本では仕事の基本である「報・連・相(報告・連絡・相談)」。しかし、ベトナムには報・連・相という考え方自体がないため、新卒の新入社員だけではなく、ベテランの社員でさえ、ほとんど報・連・相ができていません。ミスが起きた際も自己判断で処理し、ミスが公になるまで報・連・相を行わず、かえって問題を大きくしてしまうこともあります。報・連・相の大切さを伝え、習慣を根付かせることや、こまめに進捗確認を行って管理することが重要です。

不透明なお金のやりとりはしない

ベトナムには減ってはいるものの、まだ賄賂の習慣が残っています。明らかな賄賂や接待などさまざまな形で不透明なお金のやりとりがあるのが現状です。また、外資系企業の設立手続きも賄賂を払えば簡単に済むという話もあります。しかし、ベトナムでは2019年に改正汚職防止法が施行され、公的機関のみだった規制対象が民間企業にも広がりました。民間企業での贈収賄も規定されているため、違反すれば刑事責任を問われることもあります。くれぐれも不透明なお金のやりとりには注意しましょう。

贈答文化を大切にする

日本でもクライアントにお中元やお歳暮を贈る習慣がありますが、ベトナムでも贈答の文化があります。クライアントを訪問する際は手土産を持参するようにしましょう。また、社内でも贈り物をし合うのがベトナム流。国際女性デーには男性が女性に花や化粧品などを渡したり、社員の誕生日にはプレゼントを贈ったりしています。旧正月明けには旅行や帰省先で買ったお土産を渡し合うことも。ベトナム人には日本人のお土産を渡すととても喜ばれます。こうした贈答文化を大切にすることで、ベトナムでスムーズにビジネスを進めることができるでしょう。

日本よりビジネスアワーが早い

ベトナムは日本より勤務時間が朝早く、就業時間は8~17時が一般的です。朝早く行動するため、多くのベトナム人はコンビニや大衆食堂など外出先で朝食を済ませます。市場や大衆食堂の中には朝5時から営業している店もあります。昼休憩は12~13時で、昼食は早めに取って昼寝をする人が多いようです。一部の企業では、昼寝の時間を設けており、昼休憩が14時まである場合も。そのため、クライアントにアポイントを取るときや連絡をするときも11~14時の時間は避けることをおすすめします。また、先に述べたようにベトナム人は家族との時間を大切にしているので、17時になったら基本的に残業はせずすぐに帰ります。

飲み会や会食でのマナーに注意

お酒や食事の席を通して、コミュニケーションを図るのは日本・ベトナム共通です。ただし、ベトナムならではのマナーもあります。たとえば、乾杯は最初の1回だけではなく、何度も繰り返します。一人で勝手に飲み進めるのはマナー違反になることもあります。また、お皿に口は付けず、スプーンを使う、テーブル会計が基本など、日本と違う習慣もあるので、注意が必要です。

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